白熱!個性ぶつかる対抗戦 ― RISING GO STARS 日本 VS ウクライナ
ウクライナはヨーロッパ有数の囲碁大国。そこに目を付けたドイツを拠点に囲碁文化を発信するインフルエンサーの福島あきらさん(25)が4月11日、藤澤一就八段の協力のもと、ウクライナ選手と藤澤門下生による若手棋士対抗戦を行いました。日本からは主将・吉田透真初段(15)、副将・藤澤ななみ初段(17)、三将・小川蓮さん(11)、ウクライナからは主将・アンドリー・クラヴェッツ三段(35)、副将・ヴァレリー・クルシェルニツキさん(24)、三将・ラリオン・シロトキンさん(9)が参加。NHK方式(30秒の秒読みで1分間10回の考慮時間)の早碁で、主将戦から順番に対局し、結果は日本の2勝1敗で日本チームの勝利となりました。
祖国が戦時下という厳しい状況にあるウクライナ選手にエールを送ると共に、若手同士で切磋琢磨し、互いの理解を深めようという本企画。国も言語も文化も違うけれど盤を挟んで向かい合うとお互いの考えが伝わり分かり合えるものです。白熱した対局は観るものを魅了し、大いに盛り上がりました。

顔が見えるオンライン対局
今回はパンダネット対局ソフトの新機能、ビデオ通話機能を使用し、対局中もお互いの顔が見える形でのネット対戦が実現しました。対局の模様は福島さんのユーチューブチャンネル「アキラの碁」で中継。解説は寺山怜六段が務めました。終局後は福島さんとヨーロッパ囲碁連盟のマティウシュ・スルマ四段も対局ルームに接続し、検討を行いました。

主将戦 吉田初段 VS アンドリー三段

吉田初段は今年度入段を果たした藤澤一門期待の新星。対するアンドリー三段は10人しかいないヨーロッパの棋士の一人です。アンドリーさんは2021年にウクライナ情勢の緊迫化を受けてドイツに移住し、現在は囲碁講師をしているとのこと。棋風は模様を張って中盤に戦う碁で、今回の対局を楽しみにしているとおっしゃっていました。
対局は黒の吉田初段が実利を稼ぎ、白のアンドリーさんが模様を張る展開に。左辺を大きく囲う白42に寺山六段は「スケールが大きい」と評価しました。しかし、吉田初段の荒らしが的確で形勢は一気に傾きます。その後、アンドリーさんが勝負手を何度も繰り出したものの及ばず、黒中押し勝ちとなりました。
アンドリーさんは「碁はうまくいかなかったけれど、間違いなくこの勝負は楽しめた」と話しました。
副将戦 藤澤初段 VS ヴァレリーさん

藤澤初段の父は藤澤一就八段。今年度関西棋院で入段を果たしました。対するヴァレリーさんはドイツの大学で研究する大学院生。ヨーロッパ囲碁選手権で準優勝しているトッププレーヤーです。「来年行われるプロ試験にもエントリーしたいと思っている」と言います。
対局は黒の藤澤初段も白のヴァレリーさんも戦い好きとあって、大変な乱戦となりました。途中は藤澤初段が有利に戦いを進めていましたが、黒121から125の切断がやや強引でカウンターパンチを受けました。攻勢に転じたヴァレリーさんの着手はよどみなく寺山六段は「戦いに入ってからが非常にしっかりしている。素晴らしいヨミです」と絶賛しました。結果はヴァレリーさんが藤澤初段の大石を仕留めて白中押し勝ち。チーム1勝1敗として三将戦に繋げました。
三将戦 小川さん VS ラリオンさん

小川さんは院生Aクラス。日本国内の大会で何度も優勝している他、ワールドユース囲碁選手権という世界大会でも準優勝しています。対するラリオンさんは2年半前に囲碁を始めたばかりでアマチュアトップクラスの棋力になった天才少年。ウクライナ東部のハルキウ出身で、ロシアによる侵攻でミサイルに怯える日々の中、約3年前にアイルランドに移住を決めました。英語を勉強する一環で観たアニメ『ヒカルの碁』で囲碁に興味を持って始めたとのこと。福島さんが本企画をやりたいと思ったきっかけの人物でもあります。
小川さんの黒番。天才少年同士の対局は今回の中で最もじっくりとした大人な碁になりました。中盤までAI(人工知能)の評価値がほぼ互角。超ハイレベルの戦いに寺山六段は「信じられないくらい強い」と驚きを隠せませんでした。勝負が動いたのは終盤に差しかかったあたり。白の緩着でわずかに形勢が黒に傾くと、小川さんが的確なヨセを連発し、最後は黒18目半勝ちとなりました。小川さんとラリオンさんは今回が初対局でしたが、実は半年前のワールドユース囲碁選手権で会っているとのこと。局後はお互いに「強かった」と称え合いました。
ラリオンさんは「夢はプロ棋士になること。好きな棋士は芝野虎丸棋聖」と言います。日本でプロになることにも興味があり、福島さんは「今回の企画がラリオンくんの夢を叶えるきっかけになれば」と話しました。
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記事/品田渓
※記事の内容・棋士のタイトルや段位は2025年4月収録当時
当日の対局の様子はこちらからご覧いただけます
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