中国囲碁ニュース

中国の著名な棋戦情報をお伝えします。
中国からの囲碁ニュースを皆様にお伝えします。

棋声人語 [ 2024年6月21日 ]

楊楷文九段が「大棋士」のタイトルを獲得

 広東省深圳市宝安区が後援する中国囲碁大棋士戦は、2023年で第3回を迎えた。トップ棋士32名のみが参加した過去2回とは異なり、第3回大会では9月に予選を設け、初めて全てのプロ棋士に「大棋士」の栄誉が開放された。10月と11月に北京で本戦の最初の2回戦が行われ、8名の棋士が12月15日から19日まで深圳で行われるベスト8から挑戦者決定戦までの出場権を勝ち取った。

 出場権を得た棋士達はダークホース色満載で、楊楷文九段(26歳)は、沈沛然七段(22歳)、楊鼎新九段(25歳)、張涛八段(32歳)に連勝し、準決勝と挑戦者決定戦では、さらに2人の世界チャンピオン、范廷鈺九段(27歳)と党毅飛九段(29歳)を破り、初めて挑戦権を獲得した。決勝戦では、楊楷文九段は局面をしっかりとキープし、終盤に力を発揮して、前2回の優勝者である丁浩九段(23歳)に中押し勝ちを収め、「大棋士」のタイトルを手にした。

 楊楷文九段は2023年に深圳チームの所属棋士となった。今回、自身の初タイトルを深圳で獲得したことは非常に意義深い出来事である。そしてAI時代において、かつての「中堅棋士」とされていた棋士達にもっと多くの可能性があることを示した。ちなみに、大棋士戦の優勝賞金と準優勝賞金はそれぞれ50万、20万元である(約1100万、440万円)。

図1:「大棋士」の文字の中に参加棋士全員の名前が書かれた大会ボード。主催者側の工夫が凝らされたデザインだ。
図1:「大棋士」の文字の中に参加棋士全員の名前が書かれた大会ボード。主催者側の工夫が凝らされたデザインだ。
図2:決勝戦会場。
図2:決勝戦会場。
 
図3:杨楷文九段が優勝後にインタビューを受けた。
図3:杨楷文九段が優勝後にインタビューを受けた。
図4:大棋士戦の決勝戦と同時期に、深圳で第43回世界アマチュア囲碁選手権大会が開催された。写真は日本の栗田佳樹さんがヨーロッパの選手と対戦する様子である。
図4:大棋士戦の決勝戦と同時期に、深圳で第43回世界アマチュア囲碁選手権大会が開催された。写真は日本の栗田佳樹さんがヨーロッパの選手と対戦する様子である。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年6月5日 ]

黄明宇六段、当湖十局杯を制す

 中国のCCTV杯テレビ早碁戦は長い歴史を持っているが、中央テレビの経営戦略の変化により、2023年にはその名称がなくなり、この棋戦は完全に浙江省平湖市が独自に開催することとなった。大会名から「CCTV」の4つの英字が削除され、「当湖十局杯」のまま残された。2023年10月、名称を変えた新しい大会がスタートし、出場棋士はこれまでの32人または64人ではなくなった。この制度変更により、今回は前例のない新しいチャンピオンが誕生した。

 プロ棋士が自由に参加申し込みできるようになった結果、2023年の当湖十局杯には過去最高の238人が参加し、かつてない盛況を見せた。ベテランの金偉斌七段(61歳)は17年ぶりに大会に復帰し、若手の対戦相手を破って、本戦出場まであと一歩のところまで迫った。今大会で一番大きな活躍を見せたのは黄明宇六段(21歳)。韓墨陽三段(15歳)、陳翰祺五段(23歳)に連勝し、64強の本戦に進出を決めた。

 本戦の最初の三回戦は2023年12月8日と9日に杭州棋院で引き続き行われた。黄六段は馬靖原四段(14歳)、於之瑩八段(26歳)、伊凌涛八段(23歳)に連勝した。ベスト8から決勝までの対局は2024年1月18日から20日まで、「当湖十局」の対局地である浙江省平湖市で行われた。黄六段は強豪の世界チャンピオン、楊鼎新九段(25歳)を破り、準決勝では趙晨宇九段(24歳)に大逆転勝利を収めた。これまでプロの大きなタイトル戦とは無縁だった黄六段は、まるで囲碁の神に選ばれたかのようであった。決勝戦では、昨年の優勝者である時越九段(33歳)に予期せぬ大きなミスがあり、黄六段は敗北寸前から逆転、賞金35万元(約750万円)の人生初のタイトルを手にした。

図1:決勝戦現場
図1:決勝戦現場
図2:上海出身の棋士、黄明宇六段。
図2:上海出身の棋士、黄明宇六段。
 
図3:中国の囲碁が高度にスポーツ化されているため、高齢の棋士が試合に参加することは非常に稀である。今大会の当湖十局杯予選で、金偉斌七段が王晶磊初段(27歳)に勝利した対局は、中国囲碁の公式戦における最高齢勝利記録のトップ5に入った。
図3:中国の囲碁が高度にスポーツ化されているため、高齢の棋士が試合に参加することは非常に稀である。今大会の当湖十局杯予選で、金偉斌七段が王晶磊初段(27歳)に勝利した対局は、中国囲碁の公式戦における最高齢勝利記録のトップ5に入った。
図4:時越九段は2022年の前回の当湖十局杯で優勝しており、今大会の決勝でも勝利は目前で、連覇が迫っていた。しかし、黄明宇六段が黒の217手目でアタリの際、秒読みの中で時越九段は先手で黒の一子を取ることを忘れ、直接218手目に粘ってしまった。その結果、黒の219手目で白の二子を取られ、大きな利益を得た。この大きなミスにより、黄六段は高価な金杯を手にすることができた。
図4:時越九段は2022年の前回の当湖十局杯で優勝しており、今大会の決勝でも勝利は目前で、連覇が迫っていた。しかし、黄明宇六段が黒の217手目でアタリの際、秒読みの中で時越九段は先手で黒の一子を取ることを忘れ、直接218手目に粘ってしまった。その結果、黒の219手目で白の二子を取られ、大きな利益を得た。この大きなミスにより、黄六段は高価な金杯を手にすることができた。
 

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2024年5月23日 ]

呉清源杯で初の日韓優勝争い

 第6回呉清源杯世界女子囲碁選手権は、オンラインから対面対局へ移行し、2023年6月にオンラインでベスト4が決定した後、11月30日から12月3日にかけて福建省福州市の呉清源囲碁会館で決勝戦が行われた。準決勝は、周泓余七段(21歳)と方若曦五段(21歳)が藤沢里菜六段(25歳)、崔精九段(27歳)に敗れ、中国にとっては衝撃的な結果となった。特に大きな期待を寄せられていた周七段は、序盤で優勢を占めていたにもかかわらず、藤沢六段に逆転され、惜敗した。

 16人制の世界女流棋戦で日本の女流棋士が決勝に進出したのは史上初のことで、女流の世界選手権が始まって約30年、初の日韓対決となった。しかし、第2回と第4回の呉清源杯で優勝した崔精九段はやはり女流棋士の中でも突出した存在であり、決勝の2局とも藤沢六段に付け入る隙を与えず、3度目の優勝を果たした。ちなみに、呉清源杯の優勝、準優勝賞金は50万元と20万元(約1000万円と400万円)である。

 いずれにせよ昭和の棋聖、呉清源(1914-2014)の生誕地でその名を冠した大会で歴史的な快挙を果たした藤沢里菜は、今後のさらなる開花を予感させている。

 2024年の第7回呉清源杯は、24人が参加するトーナメント形式から、参加制限のないオープン形式に変更される予定である。

図1:呉清源囲碁会館の中庭での決勝戦。
図1:呉清源囲碁会館の中庭での決勝戦。
図2:日本棋院の常務理事である青木喜久代八段(55歳)と韓国チームのコーチである吴政娥五段(30歳)も共に検討に参加した。
図2:日本棋院の常務理事である青木喜久代八段(55歳)と韓国チームのコーチである吴政娥五段(30歳)も共に検討に参加した。
 
図3:呉清源囲碁会館の前で記念撮影する藤沢里菜六段。
図3:呉清源囲碁会館の前で記念撮影する藤沢里菜六段。
図4:韓国チームの楽しそうな記念写真。
図4:韓国チームの楽しそうな記念写真。
 
図5:韓国チームの楽しそうな記念写真。
図5:韓国チームの楽しそうな記念写真。
図6:ホテルのロビーで巨大なクリスマスツリーを撮影する藤沢里菜六段。
図6:ホテルのロビーで巨大なクリスマスツリーを撮影する藤沢里菜六段。
 
図7:優勝者と準優勝者がトロフィーを掲げた。
図7:優勝者と準優勝者がトロフィーを掲げた。
図8:かわいらしくトロフィーを頭の上に乗せる崔精九段。
図8:かわいらしくトロフィーを頭の上に乗せる崔精九段。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年5月14日 ]

中国の3つの新鋭戦が無事閉幕

 2023年3月下旬から4月上旬にかけて行われた第27回馬橋杯中国囲碁新人王戦と第6回博思ソフト杯中国囲碁新鋭争覇戦は、それぞれ四回戦のトーナメントを経て、決勝進出者を決めた。優勝争いのルールは、新人王戦では二人の棋士が三番勝負で決勝を行い、新鋭戦では八人の棋士が七回の総当たり戦で競う。両棋戦ともに、男子棋士は18歳以下、女流棋士は20歳以下が対象で、優勝賞金と準優勝賞金はそれぞれ12万元、7万元(約250万、150万円)である。

 半年以上の待ち時間を経て、新人王戦の決勝は11月8日と9日に上海市の馬橋鎮で行われ、王春晖四段(17歳)が許一笛四段(16歳)を2連勝で破り、初の新人王に輝いた。新鋭戦の決勝は11月30日から12月1日にかけて福建省福州市の博思ソフトウェアパークで行われ、李沢鋭五段(18歳)が6勝1敗で初優勝を果たした。

 また、11月11日から15日まで、江西省景徳鎮市で新たに創設された新鋭プロ棋士大会の「万物初始杯中国プロ新人オープン戦」が開催された。この大会の参加資格は2021年、2022年、2023年の3年間に入段した棋士である。2022年にプロ棋士となった周子弈二段(15歳)は、5日間で夏駿初段(21歳)、王舜博初段(13歳)、賈得一初段(17歳)、陳轶哲初段(17歳)、段博尧二段(14歳)に連勝し、決勝では王若宇三段(15歳)に2対0で勝利して、初優勝を飾った。新人オープン戦の優勝賞金と準優勝賞金は従来の新人王戦や新鋭戦よりもやや高額で、優勝賞金は15万元、準優勝賞金は8万元(約310万円、170万円)。

図1:新人王戦決勝会場
図1:新人王戦決勝会場
図2:新鋭戦表彰式、中央が李沢鋭五段。
図2:新鋭戦表彰式、中央が李沢鋭五段。
 
図3:新人オープン戦決勝会場
図3:新人オープン戦決勝会場

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2024年4月29日 ]

丁浩九段が三星杯で戴冠、国際棋戦二冠となった

図1:決勝戦現場
図1:決勝戦現場。

 2023年の国際棋戦で、LG杯優勝者は中国の丁浩九段(23歳)、衢州爛柯杯は中国の辜梓豪九段(25歳)、春蘭杯は韓国の卞相壹九段(26歳)、応氏杯は韓国の申真諝九段(23歳)で、中韓両国がちょうど2対2になった。年内の決着はすべて、11月16日から28日にかけての三星火災杯世界囲碁マスターズにかかっている。

 三年ぶりに、三星杯がオフラインに戻り、韓国・高陽のサムスン研究所で続けられた。32名の世界トップ棋士のうち、ワイルドカードはウクライナのアンドレイ初段に授与された。井山裕太九段(34歳)と依田紀基九段(57歳)を率いる日本人棋士は5人全員が初戦で敗退し、1988年に日本人棋士が初めて8強入りを果たさなかった2023年に。

 韓国の第一人者、申真諝九段は、中国新鋭棋士の王星昊九段(19歳)とアジア競技大会金メダリストの許皓鋐九段(22歳)を連勝した後、中国の謝爾豪九段(25歳)に8強で阻まれ、韓国の大旗が崩れ落ちた。準決勝戦では、中国の三人が韓国の一人を攻める構図となり、前代の韓国最強手、朴廷桓九段(30歳)が大優勢の中で丁浩九段に逆転され、中国棋士が4年ぶりに三星杯の優勝と準優勝を独占した。

 決勝戦では、丁浩九段が謝爾豪九段に2-1で勝利し、年初にLG杯を獲得した後、1年での国際棋戦二冠を達成し、中国の新たな第一人者の有力な候補となった。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2024年4月15日 ]

深圳で囲碁棋戦が大活発

 2023年11月中旬から下旬にかけて、中国囲碁の注目は南海岸の深圳市に集中していた。11月18日から26日まで、中国囲碁個人選手権が南山区で行われ、11月24日から26日まで、世界囲碁伝説マスターズが龍華区で燃え盛かった。そして11月27日と28日には、女子囲碁名手招待戦が羅湖区で行われ、非常に活発であった。

 中国囲碁個人選手権は中国囲碁界で最も古い大会であり、2020年から2022年までの3年間はすべて中止されていたが、2023年には1年に2回の大会が行われ、若手棋士の対局数が急増した(2022年度の大会は9月に開催された)。11月の大会では、於之瑩七段が八段に昇段する歴史的な瞬間が見られた(11月24日に李赫に勝利し、この対局は彼女の26歳の誕生日の翌日にちょうど当たる)。於八段も8勝1敗という素晴らしい成績で9年ぶりに女子組の優勝を果たした。男子組の優勝者は於八段のチームメイトであり、同じく江蘇棋院に所属する王世一七段(23歳)が獲得した。

 世界囲碁伝説マスターズは深セン市龍華区政府の新しい取り組みであり、囲碁を愛好する政府のリーダーシップの提案に基づき、聶衛平九段(71歳)、馬暁春九段(59歳)、武宮正樹九段(72歳)、小林光一九段(71歳)、曹薰鉉九段(70歳)、劉昌赫九段(57歳)、王立誠九段(65歳)、王銘琬九段(62歳)の8名の著名な棋士を招き、過去を偲ぶ大会となった。長らく大会で勝利を収めていなかった馬九段が素晴らしい姿を見せ、王九段、聶九段、劉九段を連破し、優勝した。

 女流囲碁名手戦は2021年に準備されたが、新型コロナの流行のため何度も延期され、2023年にようやくアジア大会の金メダルを獲得した選手達がみんな揃って、開催が実現した。8名の女流名手が競い合い、アジア大会の功労者である李赫五段(31歳)が芮逎偉九段(60歳)、於之瑩八段、そして汪雨博五段(27歳)を連破し、11月初めに行われた中国女子囲碁オープンでの優勝に続いて再び優勝し、賞金10万元(約210万円)を獲得した。

図1:2023中国囲碁個人選手権、女子組優勝の於之瑩八段。
図1:2023中国囲碁個人選手権、女子組優勝の於之瑩八段。
図2:2023中国囲碁個人選手権、男子組優勝の王世一七段。
図2:2023中国囲碁個人選手権、男子組優勝の王世一七段。
 
図3:世界囲碁伝説マスターズ優勝の馬暁春九段。
図3:世界囲碁伝説マスターズ優勝の馬暁春九段。
図4:女流囲碁名手戦の決勝戦現場。
図4:女流囲碁名手戦の決勝戦現場。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年3月25日 ]

王星昊九段が倡棋杯を獲得、棋戦初優勝を果たした

図1:決勝戦現場
図1:決勝戦現場。

 第18回倡棋杯中国プロ囲碁選手権は数々の波乱を経て、2022年3月にオンラインで予選を行う予定であったが、ある棋士がAIを使用した不正行為が明るみに出たため、さらに新型コロナウイルスの流行と対策の遅延もあり、実際には2023年3月まで延期された。4月には30人の本戦棋士が上海で集まり、7月に引き続き上海で準決勝が行われ、決勝は10月20日と22日に四川省成都市で行われ、1年半以上にわたる長い幕が閉じられた。

 2022年初の登録時、ランキングはまだ低く、先輩棋士である孟泰齢七段(36歳)や王昊洋六段(35歳)などが参加を辞退したため、わずかに最後の予選枠に辛うじて入った王星昊九段(19歳)は、3月に張羅子辛四段(19歳)や楊楷文九段(26歳)を打ち破り、本戦ではまた范廷鈺九段(27歳)、李維清九段(23歳)、韓一洲八段(26歳)を連破し、準決勝では中国の第一人者である柯潔九段(26歳)を2勝0敗で破り、若者の成長を十分に示した。

 決勝戦で、王九段は再び2勝0敗で倡棋杯優勝経験者の羋昱廷九段(27歳)を完封した。上海出身の彼は、上海市應昌期囲碁教育基金会が主催する棋戦で、棋士生涯の棋戦初優勝を果たしたことは非常に意義深いものであろう。ちなみに、倡棋杯の優勝者と準優勝者賞金はそれぞれ45万人民元と15万人民元(約900万円、300万円)である。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2024年3月20日 ]

李赫五段が「建橋杯」を初戴冠

 第19回建橋杯中国女子囲碁オープン戦は7月に予選と3ラウンドの本戦を終え、準決勝戦と決勝戦は2023年11月6日から9日まで上海建橋学院で行われた。今回上海に出場する4名の女流棋士のうち、3名は前回と同じメンバで、王晨星五段(32歳)と周泓余七段(21歳)は前回に続き再び対決し、もう1組は、アジア大会の中国代表である李赫五段(31歳)が有名な美人棋士の高星四段(27歳)と対戦する。

 準決勝戦では、懐古的な展開が繰り広げられ、前回敗れた王五段と李五段が共に若手を打ち負かした。中国囲碁界で30歳以上の二人の女流棋士がタイトルを争うのは、2005年の女流名人戦(叶桂五段対黎春華四段)以来、すでに18年ぶりであった。王五段と李五段はまた2010年の中国第4回女流新人王戦の決勝で対戦したこともあり、その時の冠名も「建橋杯」であり、さすが運命的な縁がある。

 決勝戦では、李赫五段がアジア大会金メダリストの実力を存分に発揮し、二局とも中押勝ちの完勝を収め、棋士生涯で初めて建橋杯の優勝を果した。劉星七段(39歳)と結婚した王晨星五段は、現在二人子の母親であり、子育てが競技状態に影響を及ぼすのは避けられなかった。ちなみに、建橋杯の優勝者と準優勝者の賞金は、それぞれ30万人民元(約600万円、240万円)と12万人民元(約240万円、96万円)である。

 残念なことに、建橋杯の創設者である周星增(61歳)は病気のため、今回の決勝戦現場に出席することができなかった。これは建橋杯の20年の歴史上初めてのことであり、彼の健康状態と建橋杯の未来について多くの心配を引き起こす。

図1:大学キャンパス内での建橋杯の対局場。
図1:大学キャンパス内での建橋杯の対局場。
図2:決勝戦現場。
図2:決勝戦現場。
 
図3:優勝者と準優勝者の記念写真。
図3:優勝者と準優勝者の記念写真。
図4:周泓余七段と高星四段が上海建橋学院の囲碁教室で、囲碁専攻の学生たちを指導している。
図4:周泓余七段と高星四段が上海建橋学院の囲碁教室で、囲碁専攻の学生たちを指導している。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年3月6日 ]

羋昱廷名人が名人位を防衛

図1:決勝戦会場
図1:決勝戦会場。

 中国の第33回「中吉号杯」囲碁名人戦は、2023年4月の初めに挑戦者が柯潔九段(26歳)に決定した後、アジア競技大会の選抜、合宿、試合、そしてマインドスポーツ大会などの大規模なイベントが連続して行われたため、決勝は11月8日から11日にかけて再び広東省深圳市で開催された。羋昱廷名人(27歳)が最後にタイトルを防衛したのは、2019年9月の第32回大会で、許嘉陽九段(24歳)を打ち負かしてから4年ぶりに同じ舞台に立った。

 挑戦者が決まってから待つこと7か月、柯九段の調子は急上昇と急降下を繰り返し、11月8日の決勝第一局では大きな優勢を得ていたが、羋名人に逆転された。彼が一か月前に国手戦で丁浩九段(23歳)に敗れた結末を思い起こさせる。続いての11月10日、柯九段は絶望の中でも諦めることなく羋名人の敗着を待ち、スコアを1勝1敗に引き戻した。しかし三局目は羋名人が柯九段に完勝、2018年に連笑九段(29歳)の名人三連覇に終止符を打った羋名人が2勝1敗で名人位を防衛、連笑九段と同様に三連覇を達成した。

 中国囲碁名人戦は第33回から、優勝者と準優勝者の賞金賞金が30万人民元と10万人民元から、40万人民元と20万人民元(それぞれ約600万円、200万円、800万円、400万円に相当)に増額された。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2024年3月4日 ]

四年に一回のマインドスポーツ大会

 中国棋院主催のマインドスポーツ大会は4年に1回開催され、第5回大会は2023年10月26日から11月4日まで安徽省合肥市で行われた。6つの地区に分かれて囲碁、中国象棋、チェス、ブリッジ、チェッカー、五目並べの6種目が開催され、盛況であった。中国全土の40以上の省、自治区、直轄市、計画単列市、業界スポーツ協会が合肥市に集まり、他のスポーツとは異なる「マインド競技」が展開された。

 囲碁は11の小項目に分かれ、伝統的な強豪である浙江と上海が大本命となった。浙江チームはプロ女子団体の金メダルを獲得し、チームの中で丁浩九段(23歳)が男子個人の金メダル、周泓余七段(21歳)がプロ女子の金メダル、汪雨博五段(27歳)がプロ女子早碁の金メダル、章重恒がアマチュア女子の金メダルを獲得した。上海チームはアマチュア団体の金メダルを獲得し、チームの中で王琛八段がアマチュア男子の金メダルを獲得した。

 「虎口から歯を抜く」のは新進気鋭の深圳チームであった。2023年に江西チームから移籍した辜梓豪九段(25歳)がプロ男子早碁の金メダルを獲得し、最も重みのあるプロ男子団体戦でもチームを金メダルに導くなど活躍した。そのほか、ペア碁と大学生の金メダルは、山東チームの王爽五段(28歳)・范廷鈺九段(27歳)ペア、四川チームの廖元赫九段(23歳)がそれぞれ獲得した。

 四年後の第6回中国マインドスポーツ大会は、2027年に重慶市で開催する予定である。

図1:名前も段位も同じ李小溪四段(山西省:1994年生まれ、山東省:2005年生まれ)が個人戦と団体戦で2回対戦し、いずれも年長の選手が勝利した。
図1:名前も段位も同じ李小溪四段(山西省:1994年生まれ、山東省:2005年生まれ)が個人戦と団体戦で2回対戦し、いずれも年長の選手が勝利した。
図2:人気棋士の戦鷹二段(28歳)と彭荃七段(38歳)がペアを組んでペア碁に参戦。「フクロウコンビ」と呼ばれて注目を集めた。(彭七段は「大顔の猫」というニックネームで知られている)。
図2:人気棋士の戦鷹二段(28歳)と彭荃七段(38歳)がペアを組んでペア碁に参戦。「フクロウコンビ」と呼ばれて注目を集めた。(彭七段は「大顔の猫」というニックネームで知られている)。
 
図3:大学生グループには複数のプロ棋士が参加しており、四川大学に在籍する廖元赫九段が最後に笑った。
図3:大学生グループには複数のプロ棋士が参加しており、四川大学に在籍する廖元赫九段が最後に笑った。
図4:アマチュア団体は、年齢と性別によって7つに分かれた。10歳以下の組では可愛らしい子供たちの対決が多く見られる。
図4:アマチュア団体は、年齢と性別によって7つに分かれた。10歳以下の組では可愛らしい子供たちの対決が多く見られる。
 
図5:プロ男子早碁戦で早々に敗退し、プロ男子団体戦でも不利なスタートを切ったが、柯潔九段(26歳)は友人の連笑九段(29歳)に完勝し、雲南チームを銅メダルに導いた。
図5:プロ男子早碁戦で早々に敗退し、プロ男子団体戦でも不利なスタートを切ったが、柯潔九段(26歳)は友人の連笑九段(29歳)に完勝し、雲南チームを銅メダルに導いた。
図6:かつてのライバルである陳耀燁九段(34歳)と朴文垚九段(35歳)が、それぞれ北京チームと黒竜江チームを代表して、久しぶりに再会した。
図6:かつてのライバルである陳耀燁九段(34歳)と朴文垚九段(35歳)が、それぞれ北京チームと黒竜江チームを代表して、久しぶりに再会した。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年2月21日 ]

聶衛平杯 世代を超えた出会い

 四川省成都市で開催された「聶衛平杯中日韓囲碁マスターズ」は、2019年に始まって以来、毎年競技形式が変わっている。第1回は50歳以上の8名のベテラン棋士による個人戦で、小林光一九段(71歳)が聶衛平九段(71歳)を破り優勝した。第2回と第3回はいずれも団体戦で、各国の年齢層の異なる棋士が対戦し、韓国と日本が相次いでトロフィーを獲得した。第4回はまた一転して、16名の20歳以下の若手棋士による個人戦となり、屠暁宇八段(20歳)が王星昊九段(19歳)を破って優勝した。

 2023年10月14日、15日、第5回聶衛平杯は再び調整が加えられ、若手組(20歳以下)8名と、達人組(40歳以上)8名がそれぞれ3回戦のトーナメントを行い、両組の1位が決勝で対戦し、「伝承」の意味が際立っている。以前の個人優勝経験者、小林九段と屠八段はワイルドカードで出場した。達人組で久しぶりに姿を見せた孔杰九段(41歳)は、王立誠九段(65歳)、李昌鎬九段(48歳)、そして古力九段(40歳)に連勝した。若手組では、王星昊九段が韓国の新星文敏鐘六段(20歳)、日本期待の新鋭福岡航太郎四段(18歳)と酒井佑規四段(19歳)を打ち負かした。

 決勝戦では、孔九段が深い技量でリードを奪い、一時はベテランの復活を期待させたが、後半は若手が主導権を握り、最終的には王九段が笑顔で優勝を飾った。ちなみに、第5回聶衛平杯の優勝賞金は25万元、準優勝賞金は10万元(約500万、200万円)である。

図1:小林光一九段と李昌鎬九段、あの頃の熱戦を彷彿とさせる「時代の王者」二人が初戦で対戦。
図1:小林光一九段と李昌鎬九段、あの頃の熱戦を彷彿とさせる「時代の王者」二人が初戦で対戦。
図2:「世界一の攻撃手」と称された劉昌赫九段(57歳)が大きな優勢の中で錯覚が生じ、「神豚」羅洗河九段(46歳)に敗れた。羅九段は組の準決勝で古力九段に敗れた。
図2:「世界一の攻撃手」と称された劉昌赫九段(57歳)が大きな優勢の中で錯覚が生じ、「神豚」羅洗河九段(46歳)に敗れた。羅九段は組の準決勝で古力九段に敗れた。
 
図3:古力九段と孔杰九段が達人組の決勝で対戦。まるで20年前に戻ったかのようだ。
図3:古力九段と孔杰九段が達人組の決勝で対戦。まるで20年前に戻ったかのようだ。
図4:世代を超えた決勝進出者。
図4:世代を超えた決勝進出者。
 
図5:日本の伝説的なベテラン棋士、小林光一九段、王立诚九段、小林觉九段(64歳)と常昊九段(47歳)が一緒に検討を行い、日本棋院理事長と中国囲碁協会主席の貴重な対談が実現した。
図5:日本の伝説的なベテラン棋士、小林光一九段、王立诚九段、小林觉九段(64歳)と常昊九段(47歳)が一緒に検討を行い、日本棋院理事長と中国囲碁協会主席の貴重な対談が実現した。
図6:大会は成都の杜甫草堂で行われた。聶衛平九段、張璇八段(55歳)は幽玄で美しい環境の草堂で現地の囲碁ファンに向けて決勝戦を大盤解説している。
図6:大会は成都の杜甫草堂で行われた。聶衛平九段、張璇八段(55歳)は幽玄で美しい環境の草堂で現地の囲碁ファンに向けて決勝戦を大盤解説している。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年2月15日 ]

楊鼎新九段が阿含・桐山杯で戴冠

 1999年に創設され、21年連続で北京にて開かれてきた伝統ある「阿漢通山杯中国大会」は、新型コロナウイルスの流行で中断を余儀なくされた。2020年には1年間中断、2021年には四川省成都市に場所を移して100人規模の大会が開催され、2022年にはオンラインでの大会に縮小せざるを得なくなったが、囲碁の分野で中国と日本をつなぐこの大会の伝統を引き継ぐべく、2023年6月6日と7日の両日、128名の棋士が杭州棋院に集まり開催された。

 8人の予選通過者が決まった後、7月5日、6日、7日に北京中国囲棋協会の対局室で戦いが繰り広げられた。予選を勝ち抜いた8名の棋士と直接本戦に進出したシード棋士は3回戦の本戦が行われ、同じ1998年生まれの辜梓豪九段と楊鼎新九段が第24回の優勝を争うこととなった。辜九段は過去に2回、阿含・桐山杯で優勝しており、楊九段は初めての決勝進出となる。

 10月18日に北京で行われた決勝戦、楊鼎新九段は秒読み一手30秒の早碁戦で優勢を崩さず、中押し勝ちを収め、2021年から2023年までの期間に4回の準優勝(中国天元戦、倡棋杯、LG杯世界囲碁棋王戦2回)を経て、王座に返り咲いた。その間、楊九段は半年間の出場停止(個人戦)を経験し、ついに曇りのない状態に戻った。

 中国の阿含・桐山杯の優勝と準優勝の賞金はそれぞれ20万元、8万元(約400万円、160万円相当)である。日本の第30回阿含・桐山杯の決勝は新型コロナウイルスの影響を受けて延期され、このため、伝統的な中日対抗戦は2024年上半期まで延期されることになった。

図1:予選で、60歳の芮廼偉九段が28歳の楊一五段と対戦した。芮九段の夫である江鋳久九段(61歳)と、楊五段の妻である高星四段(27歳)は傍で対局を見守った。
図1:予選で、60歳の芮廼偉九段が28歳の楊一五段と対戦した。芮九段の夫である江鋳久九段(61歳)と、楊五段の妻である高星四段(27歳)は傍で対局を見守った。
図2:決勝戦会場。
図2:決勝戦会場。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年2月11日 ]

丁浩九段が「国手」を防衛

図1:決勝戦会場。記録係は河南省出身の汪見虹九段(60歳)の娘、汪美成初段(24歳)。
図1:決勝戦会場。記録係は河南省出身の汪見虹九段(60歳)の娘、汪美成初段(24歳)。

 2021年に復活した中国囲碁国手戦、第1回の決勝では、丁浩九段(23歳)が柯潔九段(26歳)に勝利し、初戴冠した。2022年の国手戦は新型コロナウイルスの流行のため1年間中断し、2023年6月に第2回が河南省・開封市で再開された。柯九段は本戦で5連勝し、挑戦権を獲得、再び3歳年下の丁九段と対戦することになった。柯九段は早くから名を馳せ、高い実績を誇ることから、彼と丁九段は異なる世代の棋士と見なされ、今回の決勝は「世代別の頂点対決」という壮大な意味を持つ対局となった。

 10月12日と14日、千年の古都・汴梁城(開封市)で国手戦の決勝三番勝負が行われた。意外なことに、柯潔九段は全力を尽くしたが、丁浩九段の前ではポイントを取ることができず、2局とも混戦の末、丁九段の勝利で終わった。第二局ではコウを巡る戦いが激しく、いくつかの大石が一手間違えば破滅的な結果になる中、柯九段は地を正確に計算できなかったのか、終局まで頑張ったが、15目の大差で敗北した。結果として、丁九段は2勝0敗で「国手」二連覇を達成した。

 中国国手戦の優勝賞金は40万元、準優勝賞金は15万元(約810万円、300万円)である。

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

棋声人語 [ 2024年2月5日 ]

アジア大会、中国女子チームが金メダル獲得

 1年間延期されていた杭州アジア大会の囲碁競技が、9月24日から10月3日まで、錢塘江のほとりでついに開催され、アジアから10チームが3つの金メダルをかけて競いあった。最初に行われた男子個人戦は番狂わせが起こった。中華台北代表の許皓鋐九段(22歳)が2023年の囲碁界で一番のダークホース的存在となり、世界三強である朴廷桓九段(30歳)、申真諝九段(23歳)、柯潔九段(26歳)を連破し、三局とも半目の僅差で勝利を収めた。これにより、中国と韓国が独占してきたパターンを打ち破った。

 男子団体戦では、韓国チームが安定した試合を続け、予選、決勝ともに中国チームを4対1で破り、2010年の広州アジア大会と同じ流れを実現した。日本チームも男子団体と女子団体の両方で銅メダルを獲得し、銅メダル1つだった13年前の成績を上回った。

 中国囲碁界が予想していなかったのは、女子団体戦であった。於之瑩七段(26歳)、李赫五段(31歳)、汪雨博五段(27歳)、吴依銘五段(17歳)で構成されたチームは、予想を超える結果を収めた。李赫五段がチームの大黒柱となり、準決勝、決勝と、日本と韓国でトップクラスの実力を持つ選手、藤沢里菜六段(25歳)、崔精九段(27歳)に勝利し、中国チームは2勝1敗で連勝、ついにアジア大会史上初めての金メダルを母国で身に着けることができた。

図1:表彰式の女子選手の集合写真。
図1:表彰式の女子選手の集合写真。
図2:中国女子チーム。左から於七段、呉五段、李五段、汪五段。
図2:中国女子チーム。左から於七段、呉五段、李五段、汪五段。
 
図3:女流棋士にはほとんど負けない三星杯の準優勝者である崔精九段が、アジア大会の決勝で大石が殺され、李赫五段に惨敗した。
図3:女流棋士にはほとんど負けない三星杯の準優勝者である崔精九段が、アジア大会の決勝で大石が殺され、李赫五段に惨敗した。
図4:男子個人戦の優勝、準優勝、3位が並ぶ。左から銀メダルの柯九段、金メダルの許九段、銅メダルの申九段。
図4:男子個人戦の優勝、準優勝、3位が並ぶ。左から銀メダルの柯九段、金メダルの許九段、銅メダルの申九段。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年1月31日 ]

申眞諝九段が応氏杯で韓国の栄光を継続

 2020年9月にインターネットで始まった第9回応氏杯世界囲碁選手権は2021年1月に準決勝が終わり、決勝の対面対局の機会を待ち続けた。中国の謝科九段(23歳)と韓国の申眞諝九段(23歳)は、ようやく2023年8月21日から23日まで、上海で対戦した。第9回大会は丸3年に及ぶ、大会史上最長の期間を記録した。

 3年前の軌跡を振り返ると、申九段は今回の応氏杯で謝爾豪九段(25歳)、範廷鈺九段(27歳)、辜梓豪九段(25歳)、趙晨宇九段(24歳)を次々に突破。謝九段は初戦でヨーロッパのアリ・ジャバリン二段(29歳)を軽々と破り、続いて楊鼎新九段(25歳)、柯潔九段(26歳)との対局でも勝ち星を収め、準決勝では一力遼九段(26歳)に勝利した。しかし、決勝までの間隔が長すぎたため、申九段はその後、春蘭杯、LG杯、三星杯など、数々の世界戦優勝を獲得し、頂点に立った。謝九段は2021年5月の夢百合杯決勝で羋昱廷九段(27歳)に敗れた以降、長期にわたり低迷しているようだった。

 待ちに待った決勝戦では申九段が2局とも中押し勝ちを収め、2-0で優勝した。韓国の王者である曹薫鉉九段(70歳)、徐奉洙九段(70歳)、劉昌赫九段(57歳)、李昌鎬九段(48歳)と崔哲瀚九段(38歳)に続いての優勝で、応氏杯の創設者、応昌期先生(1917-1997)の娘である応柔爾(79歳)と第5回応氏杯優勝者の常昊九段(46歳)の手に、重厚なトロフィーと40万ドル(約6千万円)の豪華な賞金が手渡された。

図1:決勝戦会場。
図1:決勝戦会場。
図2:決勝戦の舞台は、上海市長寧区にある歴史的な建築物「孫科別荘」(1891-1973、孫文の息子)。
図2:決勝戦の舞台は、上海市長寧区にある歴史的な建築物「孫科別荘」(1891-1973、孫文の息子)。
 
図3:申九段が応氏杯のトロフィーを掲げた。
図3:申九段が応氏杯のトロフィーを掲げた。
図4:常昊九段、謝科九段、応柔爾女士、申真諝九段で写真撮影。
図4:常昊九段、謝科九段、応柔爾女士、申真諝九段で写真撮影。
 
図5:名棋士の林海峯九段(81歳)が最後に応氏杯のイベントに出席した。中国囲碁協会の新会長に就任した常昊九段から、敬意を込めて中国棋士たちのサインが入った書画「棋士楷模」が贈られた。
図5:名棋士の林海峯九段(81歳)が最後に応氏杯のイベントに出席した。中国囲碁協会の新会長に就任した常昊九段から、敬意を込めて中国棋士たちのサインが入った書画「棋士楷模」が贈られた。
図6:申真諝九段の中国のファンたちは花束とケーキを持参し、彼の5回目の世界戦優勝を祝福した。
図6:申真諝九段の中国のファンたちは花束とケーキを持参し、彼の5回目の世界戦優勝を祝福した。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年1月23日 ]

中国囲碁個人選手権が一年に二度行われる

 中国の囲碁界では、これまで定着していた「体制内三大大会」が、新型コロナウイルスの影響で三年ほど大きな打撃を受けている。団体戦は丙級が2年間も中止され、段位戦も2021年に一度だけ開催され、個人戦は三年間行われていない。中国囲碁協会は2023年7月に「内閣」が交代し、その後、2022年の中国囲碁個人選手権を9月に先行して開催することを決めた。そして11月には2023年の大会も実施され、これが歴史的に初めての「一年に二度の個人戦」となる。

 2022年の中国囲碁個人選手権は、9月6日から16日まで江蘇省無錫市で行われ、男子組は13回戦、女子組は9回戦で、いずれも持ち時間1時間と秒読み30秒3回のルールが採用された。総勢172名のプロ棋士が参加し、10日間で合計980局が対局された。これは2022年の中国囲碁界全体の公式対局数のほぼ半分に近い数字である。この時点ではアジア大会への準備が進んでいたため、アジア大会に出場する4名の女流棋士はオンラインで対局した。

 過酷な対局スケジュールの中、薛冠華六段(22歳)は11勝2敗で男子組の優勝を果たし、彼が所属する河北省囲碁チーム初の全国優勝となった。周泓余七段(21歳)は8勝1敗で、最終戦で於之瑩七段(25歳)に負けたものの、わずかな得点差で初優勝を果たした。

 中国囲碁個人選手権は賞金が設定されていないが、スポーツ選手としての技術職称と結びついており、各省の代表団内の選手の給与や賞金とも関連している。中国囲碁界にとって欠かせない重要な大会である。

図1:対局会場。
図1:対局会場。
図2:男子優勝の薛冠華六段。
図2:男子優勝の薛冠華六段。
 
図3:女子優勝の周泓余七段。
図3:女子優勝の周泓余七段。
図4:今大会最年少出場者である尹成志二段。
図4:今大会最年少出場者である尹成志二段。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年1月21日 ]

中国囲碁甲級リーグ、開幕が遅れた

 従来、4月から5月にかけて行われていた中国囲碁甲級リーグは、2023年に華為スマトフォンの賛助が終了し、また、中国囲碁協会の役員交代の影響で開催日程が決まらずにいた。しかし、新しい協会の会長に常昊九段(46歳)が選出されたことで、2023年囲碁甲級リーグは8月18日に浙江省長興県で再開することが決定し、開会式で海南雅居樂不動産会社が新しいスポンサーとして発表され、ついに「緊急事態」が収束した。

 8月18日と19日に浙江省長興県で行われた最初の2回戦の後、アジア競技大会の準備が必要とされたため、ホーム&アウェイのレギュラーシーズンは10月まで再開しかなかった。全体のシーズンスケジュールは、2024年3月までにすべて終了する予定である。

各チームメンバー

チーム名 メンバー 外国人助っ人 コーチ
蘇泊爾杭州 周睿羊九段(32)、連笑九段(29)、李欽誠九段(23)、謝科九段(23)、汪濤六段(33) 申真諝九段(23) 汪濤六段
江蘇 羋昱廷九段(27)、黄雲嵩九段(26)、趙晨宇九段(24)、陳賢八段(26)、李思璇三段(17) 無し 丁波五段(53)、羋昱廷九段
深圳龍華 羅洗河九段(44)、時越九段(32)、陶欣然九段(29)、柯潔九段(26)、陳昱森六段(24) 朴廷桓九段(30) 羅洗河九段
浙江 檀嘯九段(30)、許嘉陽九段(23)、張濤八段(32)、童夢成八段(27)、藍天四段(33) 井山裕太九段(34) 藍天四段
成都 黨毅飛九段(29)、謝爾豪九段(24)、廖元赫九段(22)、屠曉宇八段(19)、馬逸超六段(25) 無し 宋雪林九段(61)、李亮五段(51)
重慶 李軒豪九段(28)、楊鼎新九段(24)、李翔宇六段(25)、何語涵六段(23)、呂立言五段(22) 元晟溱九段(38) 古力九段(40)、廖行文七段(28)
衢州 柁嘉熹九段(32)、蔣其潤八段(22)、陳玉儂七段(25)、丁世雄五段(25)、趙甫軒初段(20) 金志錫九段(34) 許頓二段(42)
深圳聶衛平道場 辜梓豪九段(25)、楊楷文九段(26)、彭立堯八段(31)、孫騰宇七段(30)、戎毅七段(28)、李康六段(36) 無し 李康六段
上海建橋學院 李維清九段(23)、胡耀宇八段(41)、王星昊八段(19)、韓一洲八段(26)、鄥光亞七段(33)、王楚軒初段(16) 無し 劉世振七段(46)
日照 江維杰九段(31)、范廷钰九段(27)、伊凌濤八段(23)、楊宗煜二段(23)、周子弈初段(15) 申旻埈九段(24) 曹大元九段(61)
天津 唐韋星九段(30)、王世一七段(22)、王澤錦六段(24)、李昊潼四段(19) 李昌錫九段(27) 唐韋星九段
北京 范胤八段(25)、劉宇航六段(22)、陳豪鑫六段(19)、柳琪峰五段(24)、胡子豪四段(16) 金明訓九段(26) 聶衛平九段(71)
龍元明城杭州 丁浩九段(23)、夏晨琨七段(28)、郭聞潮五段(34)、金禹丞四段(19)、葉長欣三段(16) 卞相壹九段(26) 郭聞潮五段
拉薩 陳梓健七段(23)、張強六段(31)、陳浩六段(29)、沈沛然六段(21)、毛睿龍五段(33) 姜東潤九段(34歳) 陳盈初段(40歳)
上海清一 喬智健六段(28歳)、黃明宇五段(21歳)、陳一純四段(21歳)、李澤鋭四段(18歳)、王春暉三段(18歳) 芝野虎丸九段(23歳) 劉軼一二段(49歳)
山西 古靈益七段(32歳)、黃昕六段(26歳)、陳正勲六段(24歳)、張紫良六段(23歳)、黃靜遠五段(23歳) 朴健昊六段(25歳) 李亞春七段(61歳)、李魁(42歳)
図1:対局会場
図1:対局会場
図2:開幕式当日は偶然にも、聶衛平九段の71歳の誕生日だった。主催者は特別なバースデーケーキでお祝いを贈った。
図2:開幕式当日は偶然にも、聶衛平九段の71歳の誕生日だった。主催者は特別なバースデーケーキでお祝いを贈った。
 
図3:金志錫九段が柯潔九段に勝利した後、彼はライブスタジオに招待され、中国の視聴者と交流した。
図3: 金志錫九段が柯潔九段に勝利した後、彼はライブスタジオに招待され、中国の視聴者と交流した。
図4:「二人の謝さん」対決。
図4:「二人の謝さん」対決。
 

( 記事/写真:易非 )

棋声人語 [ 2024年1月5日 ]

於之瑩七段 女流名人に戴冠

 王中王戦、囲碁甲級リーグ、應氏杯が江南で順調に進行していた8月中旬。32名の中国のトップ女流棋士が内モンゴルの大草原へ北上した。鄂爾多斯市のエジンホロ旗で、第3回中国女流名人戦が行われた。男子棋士は杏花煙雨の中に身を置き、女流棋士は西北の砂漠に戦いに向かうという、囲碁の世界に独特のコントラストを形成した。

 中国女子囲碁名人戦は30年以上にわたりさまざまな地域で開催され、北京、陝西西安、海南海口、山東濟南、江蘇姜堰などがこの大会を受け持ったことがある。近年だと一貫して中国囲碁名人戦を主催してきた『人民日報』が大旗を受け継ぎ、2018年から2020年まで2回開催された。大会数はゼロから数え直され、中国女子囲碁棋戦の初挑戦制度を創設した。2023年の第3回女子名人戦は鄂爾多斯市が引き継ぎ、8月3日に杭州で予選が行われ、16名が選出された後、上位32名の本戦が8月13日から22日までの間、熱戦を繰り広げた。

 四月に女流国手に輝いた中国女流囲碁のトップ、於之瑩七段(25歳)が絶頂期を迎えた。女流名人戦では、曽楚典初段(16歳)、高星四段(27歳)、方若曦五段(21歳)、李小渓四段(18歳)を破り、挑戦者決定戦で先輩の唐奕四段に逆転勝利し、挑戦シリーズでは先に1敗を喫したものの、2対1で前回優勝した周泓余七段を破り、中国囲碁界で初めての女流国手、女流名人の二冠となった。

 中国女子名人戦の優勝賞金は25万元、準優勝賞金は10万元(約500万円、200万円日本円)である。

図1:本戦会場。
図1:本戦会場。
図2:唐奕四段は、趙奕斐五段(23歳)や陸敏全六段(24歳)など後輩たちを連破し、決勝まであと一歩のところまで進んだ。
図2:唐奕四段は、趙奕斐五段(23歳)や陸敏全六段(24歳)など後輩たちを連破し、決勝まであと一歩のところまで進んだ。
 
図3:蒙古族の民族衣装を身に着けた決勝戦の会場。
図3: 蒙古族の民族衣装を身に着けた決勝戦の会場。
図4:於女流名人。
図4:於女流名人。
 

( 記事:易非 / 写真提供:sinaサイト )

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