ヨーロッパ囲碁ニュース

ヨーロッパの囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。

囲碁ニュース [ 2025年8月26日 ]

欧州囲碁コングレス、ワルシャワで開催

欧州囲碁コングレスが、ポーランド・ワルシャワにおいて7月19日-8月2日にかけて開催された。事前の登録人数は1000人を超え、昨年のフランス・トゥルーズに続き大きな大会となった。

(写真:Harry van der Krogt、欧州囲碁連盟)
韓国棋院のディアナ・コセギ1p(右)が碁を検討。
ペア碁大会の様子。林耕三7pの姿も。

パンダネット協賛の国別対抗戦決勝フェーズには、フランス(昨年優勝)、ウクライナ、チェコ、ポーランドと、昨年とまったく同じ国々が残った。総当たり戦の結果、ポーランドが2勝1分けで初優勝を果たした。ポーランドは決勝フェーズの常連ながら、これまで主将マテウシュ・スルマ3p、副将スタニスワフ・フレイラック1p以外での星がなかなか稼げずにいたが、今回は三将の羽生康一郎5d、四将のセザリ・チェルネッキ4dがプロや6dを倒すなど共に2勝1敗と好成績を上げ、優勝に大きく貢献した。

欧州選手権参加者。
事実上の優勝決定戦となった、第2回戦のウクライナ(左)対ポーランド戦。引き分けとなった。ウクライナは1勝2分けで昨年に続く2位。
決勝のクルシェルニツキー7d(左)対スルマ3p戦。

欧州選手権においては、ポーランドのスルマ3pが決勝でウクライナのヴァレリー・クルシェルニツキー7dを粘り強い碁で中押し勝ちし優勝した。欧州の主要大会で上位の常連である実力者のスルマ3pだが、欧州選手権における優勝はこれが初めて。祖国でのコングレスで個人・団体で優勝する快挙となった。3位はアルテム・カチャノフスキー3p(ウクライナ)、4位はスタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)だった。

決勝トーナメントの結果は以下の通り。

スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド) フレイラック クルシェルニツキー スルマ
トマ・ドゥバール7d(フランス)
ヴァレリー・クルシェルニツキー7d(ウクライナ) クルシェルニツキー
フレデリック・ブロンバク7d(スウェーデン)
マテウシュ・スルマ3p(ポーランド) スルマ スルマ
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7d(フランス)
アンドリー・クラヴェッツ2p(ウクライナ) カチャノフスキー
アルテム・カチャノフスキー3p(ウクライナ)
上位3人。真ん中が優勝のスルマ3p、右が2位のクルシェルニツキー7d、左が3位のカチャノフスキー3p。

2026年のコングレスは、トルコ・アンカラでの開催が予定される。

2027年は、オランダ南部デンボス(スヘルトーヘンボス)での開催が決まった。

2026年コングレスのロゴ。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2025年6月23日 ]

欧州ペア碁選手権大会、ルーマニアで開催

欧州ペア碁選手権大会が6月5-7日にかけてルーマニア中北部のビストリツァにおいて開かれた。ビストリツァは子供向けの囲碁指導が盛んで、数多くのプレーヤーを生み出してきた土地である。

大会には欧州5カ国から9ペアが参加した。

大会の様子。(写真:欧州囲碁連盟)
ポーランドのマテウシュ・スルマ3pは娘のアグニエシュカさんと参加。なお、スルマ3pはペア碁選手権に続き8-9日に開かれた「トランシルバニア碁カップ」で優勝した。
地元ビストリツァ出身のアヴラム/ドブラニシュ ペア。
優勝のヴォーリン/オカーブロム ペア。

6回戦の結果、スウェーデンのローヴァ・ヴォーリン2dとチャーリー・オカーブロム5dのペアが全勝で見事優勝を果たした。2位はドイツのマーニャ・マルツ4d/ヨハネス・オブナウス6d(2023年欧州チャンピオンペア)、3位は地元ビストリツァ出身のラウラ・アヴラム3d/デニス・ドブラニシュ6dだった。
優勝のスウェーデンペアは、今年8月に大阪万博の枠内で開かれる国際アマチュア・ペア碁選手権大会に欧州代表として参加する。

表彰式の様子。

プラハ大会、ポドペラ7dが優勝

欧州囲碁界の5月初頭の風物詩であるプラハ大会・オールドハンターカップが5月2-4日にかけて開かれた。第53回目となる今回は、22カ国から過去最多の182人が集まる盛大な大会となった。

大会の様子。

6回戦の結果、地元出身のルカシュ・ポドペラ7dが5勝1敗で優勝した。
これに続いたのは、やはり5勝1敗のアンドリー・クラヴェッツ2p(ウクライナ)とキム・ドヒョプ7d(韓国)。さらに、4勝2敗のスタニスワフ・フレイラック1p、マテウシュ・スルマ3p(共にポーランド)、ヴァレリー・クルシェルニツキー7d(ウクライナ)だった。

第3ラウンド。手前のポドペラ7d(左)とキム7dの対局はポドペラ7dが制した。両者は5月末のオランダにおけるダッチオープン大会で再戦、ここでもポドペラ7dが勝利した。奥でヤン・プロコップ6dとヤン・シマラ1pの対局を眺めているのはチェコにおける囲碁のパイオニアである99歳のプロコップ氏。未だにインターネットで囲碁を楽しんでおられるという。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2025年5月1日 ]

欧州青少年選手権、ルーマニアで開催

欧州青少年選手権が3月6-9日にかけてルーマニア北部のヴァトラドルネイにおいて開催された。ヴァトラドルネイは2022年に欧州囲碁コングレスが開かれた場所でもある。大会には13カ国から100人超が参加した。

会場となった Centrul Muzeal Cazinoul Băilor は19世紀末の建物。(写真:欧州囲碁連盟)
参加者のグループ写真。
会場内の様子。
対局ロボットと対戦する子供達。
サイドトーナメントとして開かれたペア碁大会の表彰式。

昨年はU12(12歳未満)、U18(18歳未満)、U21(21歳未満)の3カテゴリーの大会が行われたが、今年はU12とU18のみの開催となった。

U12結果(参加者:54人)

昨年2位のバルツァ3dが優勝を果たした。バルツァ3dは2022年、3kでU12 において優勝した経験がある。2位にはウクライナのロトツキー3kが段位者の強敵を倒して食い込んだ。

順位 名前 段級位 勝敗
1 ベンデ・バルツァ 3d ハンガリー 6-0
2 デニス・ロトツキー 3k ウクライナ 5-1
3 ライアン・ツァン 3d 英国 4-2
4 ラリオン・シロトキン 1d ウクライナ 4-2
5 リリー・フー 2k オーストリア 3-3
U12の表彰式。

U18結果(参加者:52人)

U18は全勝者のない大混戦。5勝1敗で3人が並んだが、昨年5位のマルコ4dが優勝を果たした。

順位 名前 段級位 勝敗
1 オレシア・マルコ 4d ハンガリー 5-1
2 ロベルト=アンドレイ・グロス 4d ウクライナ 5-1
3 スチェパン・メダック 4d 英国 5-1
4 ヤン・コミン 4d ウクライナ 4-2
5 アントニ・ブガイ 3d オーストリア 4-2
6 バルティク・ダッハ 4d オーストリア 4-2
U18の成績優秀者。

パリ大会が開催

パリ大会がイースターの3連休、4月19-21日にかけて開かれた。182人を集める盛大な大会となった。

大会の様子。(写真:Jérôme Hubert)

5回戦まではウクライナのヴァレリー・クルシェルニツキー7dが圧倒的な内容で5連勝と突っ走ったが、最終戦6回戦で韓国出身の呉治民(オ・チミン)8dに1目半の差で惜敗。呉8dが優勝、クルシェルニツキー7dが2位となった。3位には、アイスランド在住で中国出身のイーシン・ユアン5d、4位には呉8dに唯一土を付けたバンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7dが入賞した。

順位 名前 段位 勝敗数
1 呉治民 8d 韓国 5-1
2 ヴァレリー・クルシェルニツキー 7d ウクライナ 5-1
3 イーシン・ユアン 5d 中国 5-1
4 バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア 7d フランス 4-2
5 戴俊夫 8d フランス 3-2
6 ユハン・シン 6d 英国 4-2
右が優勝の呉8d。現在は英国在住。
クルシェルニツキー7d(左)は素晴らしい内容で強豪の戴俊夫8dを破った。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2025年2月27日 ]

ドレアン=ゲナイジア7dがEGF10人目のプロに

欧州囲碁連盟(EGF)のプロ選抜システムが始まったのは2014年のこと。以来、パヴォル・リジー(スロバキア)、アリ・ジャバリン(イスラエル)、マテウシュ・スルマ(ポーランド)、イリヤ・シクシン(ロシア)、アルテム・カチャノフスキー(ウクライナ)、アンドリー・クラヴェッツ(ウクライナ)、タンギー・ルカルヴェ(フランス)、スタニスワフ・フレイラック(ポーランド)、ヤン・シマラ(チェコ)の9人が入段した。

10人目のプロを決定する大会が2月10日から16日にかけてオーストリア・ウィーンにおいて開かれた。2023年以来2年ぶりの開催となる。プロを決定するシステムは大会毎に変化してきたが、今回は12人が参加する総当たりリーグ戦となった。参加者は以下の通り。

● ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ)
● バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7d(フランス)
● アシェ・バスケス7d(スペイン)
● ドミニク・ボヴィズ6d(ハンガリー)
● ヴィクトール・リン6d(オーストリア)
● ヨナス・ヴェルティケ6d(ドイツ)
● レミ・カンパニー6d(フランス)
● マティアス・パンコケ6d(ドイツ)
● リュカ・ネイリンク6d(ベルギー)
● ベンヤミン・トイバー6d(ドイツ)
● ユツェ・シン6d(ドイツ)
● フセヴォロド・オフシェンコ6d(ウクライナ)

大会の様子。すべての対局は、デジタル碁盤の上で打たれ、自動的に配信された。(写真:欧州囲碁連盟)
カンパニー6d(右)は入段あと一歩のところまで迫った。

上位陣は実力が拮抗しているだけあって混戦となり、第5戦ですでに全勝者が消えた。中盤、第6戦終了時点では、欧州選手権者になった経験のあるドレアン=ゲナイジア7dと若手のオフシェンコ6dが5勝1敗で並び、過去3度次点に泣いているポドペラ7d、カナダ在住のカンパニー6d、スペインのバスケス7dが4勝2敗で続く展開となった。

事実上の決勝戦となったポドペラ7d(左)対ドレアン=ゲナイジア7d戦。

しかし、後半で上位陣が次々と失速。唯一連敗せずに勝利を重ねたドレアン=ゲナイジア7dが9勝2敗で10人目のプロとなり、メンタルの強さを見せた。フランスからのプロは2019年のルカルヴェ1p以来となる。ドレアン=ゲナイジア7dはハンガリーのブダペスト在住で、画廊を経営している。

なお、同時に開催された欧州プロ選手権では、アンドリー・クラヴェッツ2pが5勝1敗で優勝した。2位はアリ・ジャバリン2p、3位はアルテム・カチャノフスキー3pだった。

プロ選手権の参加者とドレアン=ゲナイジア7d(中央)。

[ 記事:野口基樹 ]

囲碁ニュース [ 2025年2月12日 ]

グランプリファイナル、クルシェルニツキー7dが優勝

グランプリファイナル大会が1月3-6日にかけてドイツ西部カールスルーエにおいて開かれた。

大会参加者。

グランプリファイナルは、2024年欧州グランプリ・サーキットの最後を飾る大会。サーキットを構成する一連の大会における成績により配分されるポイントの高い16人が参加できる。サーキットを構成する大会は、グランプリファイナルを除くと、夏に仏トゥルーズで開かれた欧州囲碁コングレスをはじめ10大会だった。

16人はまずA-Dのグループに分かれてリーグ戦を行い、上位2人が決勝トーナメントに進出するシステムである。トーナメントでは、アリ・ジャバリン2p(イスラエル)とヴァレリー・クルシェルニツキー7d(ウクライナ)が決勝に進出。序盤から大型の戦いとなったが、主導権を握ったクルシェルニツキー7dが中押し勝ちで優勝した。

中央が優勝したクルシェルニツキー7d。右が2位のジャバリン2p、左が3位のネイリンク6d。
ルカシュ・ポドペラ7d(チェコ) ジャバリン ジャバリン クルシェルニツキー
アリ・ジャバリン2p(イスラエル)
トマ・ドゥバール7d(フランス) ドレアン=ゲナイジア
バンジャマン・ドレアン=ゲナイジア7d(フランス)
リュカ・ネイリンク6d(ベルギー) ネイリンク クルシェルニツキー
スタニスワフ・フレイラック1p(ポーランド)
ダーメン・ウー6d(英国) クルシェルニツキー
ヴァレリー・クルシェルニツキー7d(ウクライナ)

[ 記事:野口基樹 ]

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