日本囲碁ニュース (棋聖戦)
日本の囲碁ニュース・棋戦情報をお伝えします。
日本で行われている囲碁のイベントや棋戦情報を皆様にお伝えします。
囲碁ニュース [ 2023年8月11日 ]
余、棋聖戦Aリーグ優勝
棋聖戦は、進行の早いAリーグが全日程を終え、余正麒八段が優勝を決めた。優勝に絡む最後の2局 ―― 余×鈴木伸二七段戦と伊田篤史九段×孫喆七段戦は8月10日に打たれた。余と孫が5勝1敗で並んでいたが、同星の場合はリーグ内順位が上位の余が優勝となる。余が負け、孫が勝った場合のみ孫が優勝するという状況だった。余×鈴木戦は大阪市の関西棋院で打たれ、序盤に鈴木の後悔の手があったようだ。リードを奪った余が逆転の隙を与えずそのまま寄り切った。伊田×孫戦は千代田区の日本棋院東京本院で打たれた。こちらも序盤に伊田が下辺でポイントをあげた。終盤に伊田に失着があり孫が追い上げたが、わずかに届かず伊田の半目勝ちとなった。余は、挑戦者決定トーナメント進出を決め、前期陥落したSリーグへの昇格も決めた。孫は優勝には届かなかったが来期は初のSリーグ参戦となる。「正直、Sに上がれるとは思ってなかったのですが、せっかくのチャンスなので一局一局大事に打ちたいと思います」と抱負を語った。Aリーグからは2名が昇格し、2名が残留。4名が降格となる。伊田は、2勝3敗という苦しい星だったが、最後の2局で余、孫を破って実力者ぶりを見せ、逆転で残留を決めた。
囲碁ニュース [ 2023年5月2日 ]
棋聖戦Sリーグ開幕
一力遼棋聖への挑戦権をかけた第48期棋聖戦(読売新聞社主催)のSリーグが開幕した。初戦は4月27日、本因坊文裕(井山裕太本因坊)と山下敬吾九段のカードが組まれた。黒番の井山が序盤から白模様を根こそぎ荒らす力強い打ち回しを見せるが、しぶとい山下も簡単には土俵を割らない。その後、山下の勝負手から難解な戦いに突入し、腕力勝負となる。最後は井山が正確な読みでシノギ切り、中押し勝ちを収めた。井山は直前に開設した自身のツイッターで「不用意な一手から一気に難しくしてしまいましたが、ギリギリ凌げていたのは幸運という他ありません」と振り返っている。すでに開幕しているAリーグでは、余正麒八段が3連勝、B1リーグでは大竹優七段が3連勝、B2リーグでは呉柏毅五段が3連勝とそれぞれ単独トップを走っている。また、ファーストトーナメント予選の準決勝で二十四世本因坊秀芳(石田芳夫二十四世本因坊)、予選決勝(4月20日)でマイケル・レドモンド九段を破った辻華二段が、女性棋士としては6人目となるCリーグ入りを決めている。今期のCリーグには、前期残留の藤沢里菜五段と辻二段、二人の女性棋士が参加することになる。
囲碁ニュース [ 2023年3月7日 ]
一力棋聖初防衛

一力遼棋聖3勝、芝野虎丸名人2勝で迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第6局が、3月9、10の両日、静岡県熱海市の「熱海後楽園ホテル」にて行われた。第5局に快勝し、2日前の十段戦で勝利した芝野がそのまま勢いに乗るのか、一力がこの一番で決めるのか……注目を集めた頂上決戦は、意外な結末となった。序盤、下辺の攻防で芝野に判断ミスがあり、一日目の早い午後の時点で一力が大きなリードを奪う。その後も、一力は手を緩めず、最強に戦って芝野を投了に追い込んだ。芝野にとっては無念の一局となった。局後の芝野は「このシリーズは、内容的にミスが多く、苦しい碁も多かったので、結果は仕方ない……実力不足だったと思っています」と静かに語った。これまで他棋戦でも「防衛」経験のなかった一力には、大きな成果となった。局後「結果出せたことにホッとしています。どの碁も紙一重の勝負でした。第4局に勝てたことが、シリーズの流れとしても大きかったと感じています」と振り返った一力。数日後に改めて取材した際は「皆さんにおめでとうと言われ、ようやく実感がわいてきました。今回の防衛は、大きな目標に向かっての通過点で、これからが大事だと思っています」と語った。
囲碁ニュース [ 2023年3月7日 ]
芝野、一力棋聖に1勝を返す
一力遼棋聖が、防衛にあと1勝として迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第5局が、3月2、3の両日、千葉県勝浦市の「三日月シーパークホテル勝浦」にて行われた。挑戦者の芝野虎丸名人は、対局前に語った「(1勝3敗という)星は気にせずに」という言葉どおり、落ち着いた打ち回しを見せ、黒番中押し勝ちで1勝を返した。一日目は、右下の難解な攻防を、両者の見事な応酬で互角に分かれる。その後、一力が左下に強気に仕掛け、芝野が「ならば」と応戦したところで、一力が封じた。二日目に入り、封じ手以降は、白番一力の打つ手が難しく、芝野が自然に打ち回しながらポイントを重ねていった。左上で芝野が生きる前に放った様子見が、一力の読みになかった手だったようだ。これに焦りを覚えた一力は、勝負手を放った。この手で我慢して普通に応じていれば、白優勢ながらまだまだ勝負の行方はわからなかったという。一力の勝負手はやや無理気味で、これを自然に咎めた芝野が、その後の一力の猛攻もかわして決着をつけた。「判断でまずいところが出てしまった」と反省した一力は「切り替えて次局に臨みたい」と語った。第6局は、3月9、10の両日、静岡県熱海市の「熱海後楽園ホテル」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2023年2月21日 ]
一力、故郷で3勝目
一力遼棋聖の2勝、挑戦者の芝野虎丸名人の1勝で迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第4局が、2月16、17の両日、宮城県仙台市の「宮城県知事公館」にて行われた。仙台は一力の出身地ということもあり、大盤解説会場には、200人ものファンが集まり熱戦を見守った。黒番の一力が、最近は実戦例が少ない高い中国流を敷いてスタート。深い研究が予想されたが、おそらく芝野が研究の進行をはずし、右下の攻防で早くも白が優勢を築いた。だが、芝野に逸機の手があり、一力が機敏に好手で返してピンチを逃れる。互いに生きていない石がいくつもある難戦の中、一力が封じて一日目を終えた。二日目は、芝野が右下の白、続いて右辺の白を捨てて左辺一帯に巨大な白模様を広げ、黒のシノギ勝負の展開となる。「一手一手が難しい」と新聞解説の許家元十段は語り、AIの評価値も揺れ動き続けた。白には勝機が何度かあったものの「読み切れなかったので仕方ない」と芝野。「読み切れてはいなかったのですが」と振り返る一力が、難解な戦いを制して中押し勝ちを収めた。一力は、「地元で結果を出せてよかった」と安堵した様子だった。立会の山下敬吾九段は、ここまでのシリーズを「結果は一力さんの3勝1敗と傾いていますが、第3局を除いては、どちらが勝ってもおかしくない拮抗した勝負が続いています」と語った。一力が一気に防衛を決めるのか、芝野が巻き返すのか。注目の第5局は、3月2、3の両日に、千葉県勝浦市の「三日月シーパークホテル勝浦」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2023年2月7日 ]
一力棋聖、会心譜の2勝目

一力遼棋聖、挑戦者の芝野虎丸名人が1勝ずつあげて迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第3局が、2月3、4の両日、長崎県西海市の「オリーブベイホテル」にて行われた。序盤、白番の一力が、上辺と左下で、研究の手を打ち下ろす。その左下で芝野が仕掛け急戦となった。下辺に波及した戦いの中、芝野が読み落とした一力の好手があり、フリカワった結果は、一見、白の大石を取った黒が有利のようだが、先手を取った白がリードを奪った。白が左上に先着すると、左辺一帯の白模様が雄大になり、さらに黒のシノギが難しい。2日目も、芝野は必死に活路を求めたが、一力が最強に的確に応じて黒を仕留め勝負が決した。134手まで白番中押し勝ち。15時53分という早い終局となった。シリーズ2勝目をあげた一力は、左上の黒を取りかけに向かった局面を、「白も難しくて、よくわかってはいなかったのですが、直接的にまずい図は見えなかったので、やってみようかなと思いました」と振り返り、「七番勝負はまだまだ先が長いですので、また、2週間後に向けてしっかり準備したいと思います」と語った。芝野は「(下辺の攻防で)一手だけうっかりしてしまいまして、下辺の分かれははっきりまずく、形勢としてはだめにしてしまった」とし、左上のシノギについても「チャンスがなかった」と完敗を認めるコメント。だが「本局は少しまずい内容になってしまいましたけど、また切り替えて、準備して、次もがんばりたいと思います」と抱負を語った。第4局は、2月16、17の両日、宮城県仙台市の「宮城県知事公館」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2023年1月24日 ]
芝野名人、タイに戻す
一力遼棋聖が先勝して迎えた第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)の第2局が、1月20、21日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて行われ、挑戦者の芝野虎丸名人が難戦を制し白番中押し勝ちとした。序盤は、黒番の一力がやや優勢に打ち進め、左上の白にコウの手段を残した。ただ、「一力さんは後悔しているのではないか」と検討陣が推察する一手があり、コウを仕掛けにくい状況となる。左上を保留し、黒が右辺に仕掛けたところで、芝野が封じ、一日目を終了した。封じ手は最強の応手で、ここから芝野の反撃が開始された。左上のコウを残したまま、右辺もコウになり、右辺の攻防が下辺、中央へと波及していく超難解な戦いが延々と続いた。下辺の白と左下の黒を取り合う大フリカワリの後も形勢はほぼ互角だったが、一力はやや悲観していたようだ。その後の下辺の攻防で最強手を繰り出し続ける中、わずかなミスが出て、これを捉えた芝野がリードを奪い、左上の白が生きる間に黒が損をし、差が開いたという。これで、スコアは1勝1敗のタイとなった。一力は「次まで2週間あくので、切り替えてがんばりたい」、芝野は「1局目に続いて本局もあまり内容はよくなかったと思うが、次までに時間があるので、しっかり準備して臨みたい」とそれぞれ抱負を語った。第3局は2月3、4の両日に、長崎県西海市の「オリーブベイホテル」にて行われる。
囲碁ニュース [ 2023年1月16日 ]
棋聖戦開幕。一力棋聖先勝

新春の大舞台、第47期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催)が開幕した。この舞台に10年出場し続けていた井山裕太本因坊にかわり、一力遼棋聖に芝野虎丸名人が挑戦する新時代の始まりでもある。注目の第1局は、1月12、13の両日に、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で行われた。握って芝野が黒番。序盤は研究熱心な両者らしく早いペースで打ち進められたが、右辺の攻防が険しくなるとペースダウン。互いに長考が続き、芝野が左上に戦線を拡大させたところで、一力が封じて一日目が終了した。新聞解説の林漢傑八段は「決着のついていない戦場が各所に残っており、読みと判断が難しい局面です」と評した。二日目に入ると、芝野の仕掛けに的確に冷静に応戦しながら一力がリードを広げていった。芝野は中央の白に狙いを定め、一力が「どうぞ取れるものなら取ってください」と応じ勝負所に入った。大盤解説会場では、大橋拓文七段らが「今の黒の手は手筋。白が危ないのではないか」と大逆転をほのめかし、控室でも、立会の小林光一名誉棋聖ら検討陣が「やはり、難戦になるんだねえ」と見守った。コウが絡む難解な局面だったが、持ち時間を残していた一力がしっかり読み切ってしのぎ、勝負を決した。大事な初戦を制した一力は「封じ手のあたりは自信がなく、中央の攻防も読めていなかった。実戦で残っていたのは運がよかったと思います」と振り返り、「気を引き締めてやっていきたい」と抱負を語った。芝野は「(二日目の途中から)チャンスを待つ打ち方を選んだのですが、チャンスはなかった気がします」。その後、大盤解説会場に移動し、ファンの前では「七番勝負は6回目ですが、今日で第1局は6連敗ということで、いつものことと切り替えて頑張りたい」と会場の笑いを誘っていた。16日、一力は井山との十段戦の本戦準決勝、芝野は関航太郎天元との碁聖戦本戦1回戦が組まれている。共にタイトなスケジュールの中、第2局は1月20、21日に、神奈川県箱根町の「ホテル花月園」にて行われる。